「養父・政五郎暗殺に端を発した黒崎組と元朱紋組との抗争事件。
悲劇の宿命を背負い神戸に去った真理。沈む太陽は再び昇るのか!?
彼女を待つ運命や如何に。」

●「夕日の恋人」あらすじ・前編
1972.5号〜10号迄


「天と地の真理!だれがつけたか あんなよい名をもちながら いつも真理のまつげはぬれている いまごろ神戸でなにをやっているんだ 真理よ…」神戸へと向かう新幹線の車内。真理を探そうと家出を決行した征二。抗争事件によって残された家族達へ仕送りをする為に、真理は何をして稼いでいるのだろうか?征二の不安は募るばかりだ。●あてのないまま神戸を訪れて数日後。偶然訪れた波止場で、荷揚げで働く男たちと野球を楽しむ真理の姿を目撃する!予想を裏切る明るさに、声をかけそびれたまま向えた夕方。征二は、真理が波止場で屋台を営み、おでんやラーメンを売り働いていることを知った。
波止場で屋台を営む真理。仕送りのお金はここで稼いだものだった

突然現われたクラスメートに真理は驚きをかくせない。

●再会の名乗りを店終いまで待ちながら様子をうかがっていると、もう一方から謎の追跡者が屋台の真理めがけナイフを投げるを発見した!●「あぶなーいっ!!」征二の声に気付いた真理は間一髪ナイフをかわす。一方、逃げる男を追う征二だったが、彼を犯人と勘違いした屋台の客の1人・西郷虎男に押さえ込まれ取り逃がしてしまう。奇妙な形で再会した真理と征二。謎の追跡者の正体に心あたりがあると語る真理だが、それ以上は硬く口をとざすばかりだった。

●西郷を交え3人で屋台を引いての帰り道。「なにもセーラー服だけに青春があるわけじゃない わたしいまゴム長の青春にも けっこう充実した生きがいを感じていてよ」という真理の言葉を聞いた征二の心には、ある決意が持ち上がっていた。そして昭和47年、元旦が訪れた。●征二の決意とは自らも神戸に残って働き稼ぐこと。少しでも真理の仕送りに役立ちたいのだ。波止場で荷あげの職につき、会いたい気持ちを堪え汗を流す。一方、真理の屋台は西郷の手伝いの甲斐もあり大繁盛。そして数日後、真理の仕送りの日が来た。●征二は郵便局で現金書留の準備をする真理のもとを訪れ、親戚 からのお年玉だと嘯き、稼いだお金を差し出す。額の多さに疑念を発する真理の問いかけに詰まったその時、征二は外に彼女の友人・水木の姿を見つける。

 


「お金がほしい…」苛酷な現実に真理は思わず呟く。

 


作曲家・大賀との出会いが真理の運命を180度変えてしまう。

●流しのアルバイトをしながらも作曲家を志望する彼だが様子がおかしい。聞けば風邪をこじらせ歌うことも出来ないが、働かなくては生活も出来ないのだ。送金を済ませたばかりの真理には一円もないのだ。ただ現実だけが重い空気となって3人ののしかかる。その様子を遠くから見ている謎の追跡者は呟く。「きれいごとの理想が現実に敗北するのを見せつけられ絶望しきってからとどめをさしてやるぜ…」●吹きすさぶ木枯らしに佇む3人。と、真理は妙案を口にする。歌えない水木が伴奏を引き、真理が歌うというのだ。その晩から盛り場を廻り始めたインスタントコンビは、真理のルックスと歌声により順調なスタートを切った。レパートリーは1曲のみ。水木の作詩作曲した「夕日はあしたの朝日」だ●「夕日よ おまえは悲しい 夕日よ おまえはさびしい わたしの青春のように わたしの消えた夢のように…」十数軒目に訪れた高級酒場で歌う真理。その時「ここにいた ついに見つけた!!」 叫ぶ客の姿があった。

●客は、レコード業界の大御所で作曲家大賀正彦と名乗り、真理を歌手としてスカウトする!成功すれば多額の仕送りが可能になる…真理は申し出を受けることにした。●数カ月後、デビューした真理は、瞬く間に大人気のアイドル歌手となった。 ●天地真理の爆発的ブームは上昇を続け、増々手の届かぬ 存在になった事に征二は寂しさをかくせない。「そのからっぽの席が そのまま おれの初恋をうしなった青春 からっぽな心だといえばキザか?」教室で真理が座っていた席を見つめる征二。●殺人的なスケジュールをこなす真理。ブロマイドは売上げ1位 ・レコードは百万枚を突破した。ある日、大賀から印税を受け取った真理はそれを9等分の小切手にして、直に元朱紋組の子分の家庭へと届ける。密かに1軒1軒訪問する真理。しかし、その様子を窓越しに見つめる謎の追跡者。「とにかく あいつを美しいまま けだかいままでは死なせん…フフフ!」人気アイドルの座を引き降ろすべく、男はあるゴシップ雑誌社に向かっていった。
人間の誠意とはすべてをなげうってこそ はじめて成立するもの。真理はキッパリ言い放つ。


真理の過去が週刊誌にスクープされた!

●いまや人気歌手として歌謡界のトップグループの仲間入りを果 たした真理。ブラウン管越しに彼女の活躍ぶりを眺める征二は、その遠い存在に寂しさを噛み締める。●一方、真理を付け狙う謎の追跡者は、有名人のスキャンダル記事を売り物にする「週刊ブラック社」に姿を現していた。サングラスに白マスクでコート姿という奇妙ないでたちに加え、真理が暴力団『朱紋組』総長・天地政五郎の娘であるというネタに担当者は疑いを向けるのだが、追跡者がそっと耳打ちした彼の身分を聞いた途端「そ そうだったのか!!それなら絶対だ!ようしドッカーンと大バクロ記事をぶっぱなそう!!」と思わぬ ビックスキャンダルに大喜びだった。●「彼女の青春の悲しみと希望をうたいあげる歌声とやらは じつはその父親にいじめぬ かれた罪なき人々のうらみの声だったとくれば おたくの雑誌は売れるぜ!!」謎の追跡者は不敵な笑いを社内に響かせるのだった…。真理に破滅の日が近づいていた。 (後編へ続く)
次回予告:「謎の追跡者が週刊誌に売り込んだゴシップ記事が原因となり、真理の人気は失速する。沈むな太陽よ! 彼女を取り巻く人々の思いは奇跡を呼ぶのか!?」
夕日の恋人ついに完結。お楽しみに!


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