「ひと夏のエピソードを数々残し、2学期となった。この秋の季節こそ天地真理に突如訪れた試練の季節の始まりだった…。 」
●「太陽の恋人」あらすじ・その3
1971.43号〜48号迄


●朝礼台に立った真理の告白を、かたずをのんで待つ征二や全校生徒。彼女の口から出たのは芥川竜之介の短編小説「ある日の大石内蔵助」の話だった。忠臣蔵の主人公である彼が仇討を終えた所から物語は始まり、切腹の日を待つ内蔵助がふと見かけた白梅の花に、自身の行動を思い返した。敵を欺くための乱心行為が世間から名作戦と評されてるが、実は遊びを心から楽しんでいたのではないのか?自分の人間らしさを勝手に美化されてしまう寂しさを内蔵助は感じていた。そんな庭先のひとときを描いた話を語る真理に一同は静かに耳を傾けていた。●そして、馬場が自分を庇うために悪役を演じたという言葉を引き出して「ほんとうの天地真理は勝ち気でオテンバでちょっぴりイジワルなところもあるごくふつうの女のコです つねにいい子であることに欲求不満があったと思います」。悪役だった頃を、どこか幸せだったと語る真理の言葉に征二は衝撃を受ける。
完全な善もないかわりに完全な悪もない、英雄もダメな人もない。真理の告白は全校生徒や教師達の胸を打った。

真理と共にクラス委員に選ばれ、征二は困惑する。

●善と悪の矛盾を人間の真の姿として語る真理に拍手をおくる不破。そしてひとり、又ひとりと拍手の輪は広がっていく。彼女を初恋の人としたことを再び誇りとして噛み締める征二や馬場であった。●真理の衝撃の告白というハプニングによって、2学期の始業式は終わった。その後教室に戻った征二を襲った事件。それは真理と共にクラス委員に選ばれてしまったのだ。夏休みの軽井沢での活躍が原因で、1学期の委員長だった芳村と1票差という結果。一度は辞退を申し出る2人だったが、芳村の薦めにより引き受ける事にする。●そして秋。さわやかな秋空のもとで行われた体育祭の日。真理の運命を大きく変える大事件が起こった。

●クラス対抗女子リレー。その抜群の運動神経で、最下位からごぼう抜きのトップでゴールを切ったアンカーの真理。そこに突然現われた刑事の一言。「じつは…おとうさんが殺された!」。刑事の話によれば、何者かにライフル銃で狙撃されたらしい。真理の育ての親で、元暴力団朱紋組の親分。彼女の決死願いで組みを解散し、今や日雇いに身を甘んじていた天地政五郎が殺された!あまりの衝撃に真理はその場で気を失ってしまう。タンカで運ばれる真理を見つめながら、彼女の身にどこまでもつきまとう不幸にいたわりの涙をこぼす征二だった。●事件は新聞・テレビに取り上げられ、質素に行われた葬式にもマスコミは群がってくる。真理と政五郎の過去を調べた記者が、その事を彼女に告げると「天地政五郎はわたしの父です!天地真理は政五郎の娘です!」「そして私は父を…父を…ほこりとしています 世間の人がなんといおうとも!」真理は毅然とした態度で記者にそう言い返すのだった。父の位牌を胸にそっと涙を流す真理を見つめる征二・馬場・芳村・そして担任の不破。薄幸の少女、天地真理のあしたは何処へ…


真理の運命を変えた刑事の知らせ!

アパートを引き払い、真理は何処へ消えたか

●天地政五郎の葬儀が終わった。しかし真理はいまだ登校しなかった。降り続く秋の長雨に征二の気持ちは沈む。「いやな予感がしやがる…これという根拠はねえが…もう二度とふたたびあの席で真理がニコニコとおれたちの太陽のように笑う日は おとずれねぇような…」征二と共に、彼女の心配する馬場・芳村の3人は放課後、真理のアパートを訪ねて驚いた!葬式のあと荷物をまとめで行く先も告げず引っ越していたのだった。天涯孤独の身の真理に寄せるあてはないというのに…。●折しも関東地方を直撃した台風の大雨にずぶ濡れて帰宅した征二は、さっきまで真理が家に来ていた事を母親から聞かされ驚く!当分登校できない故、別のクラス委員を選出して欲しいという伝言を残して去った真理を追い掛ける征二。吹き荒れる雨の中、真理を探す征二の胸にある無気味な不安が沸き起こる。身辺をきちんと整理して行く先も告げず消えた真理の目的は何か?自殺?それとも父を殺した相手への復讐?「真理ーっ!!」嵐の中、征二は叫んだ!

●今だ台風が吹き荒れる夜中。「クラブ魔王」というナイトクラブを訪れた店の社長は、閑散とした店内にたったひとりでカウンターに座る女性客を見て驚いた!自分の正体を暴力団・黒崎組の組長と知るその女性は、真理だった。彼女の存在と、膝に持った政五郎の骨箱の包みに何故か激しい動揺を見せる黒崎に、真理は父親殺しの黒幕が黒崎であると語った。「葬儀にきた もと朱紋組の子分たちが ささやきあっていたわ 黒崎が最近ライフルつかいの殺し屋をやといいれたという確証もあるタダではすまさぬ と」フと色めき立った黒崎の取り巻き達だったが、真理が元朱紋組の子分を引き連れて乗り込んでいない事を知ると、彼女を捕らえようとする。が、突如真理は持っていた骨箱をかざして「ハッパ用のダイナマイト!!スイッチひとつでこの店ぐらいあとかたもなく消しとびます!」と叫ぶ。真理は父を殺した黒崎と共にダイナマイトで死ぬつもりなのだ!「人の命をたつ復しゅうというだいそれたまねも もと朱紋組の人たちのためであり また自分も死ぬことでいくらか神さまに許されると思うの」死を覚悟した真理の度胸に、黒崎は圧倒されるばかりであった…。
真理の父・政五郎を殺したのは黒崎組の親分・黒崎だった。

窮地に陥った真理の背に、非常のムチが!

●無用な殺傷は必要なし、と黒崎の取り巻きを外へ追い出した真理。今やナイトクラブに真理と2人きりとなった黒崎は、もはや恥も外聞もなく政五郎殺しの罪を認めて許しを乞う。しかし堅気となった父を殺された怒りと、更生した元子分達を復讐のために逆戻りさせないために真理は黒崎と心中する決意は変わらない。ダイナマイトのスイッチに手をかける真理!●と、その時。予想もしなかった人物、店に雇われてる掃除婦が現われた。「ああ おばあちゃん わかってちょうだい! この店は爆破されます」事情が分からず掃除を始める彼女に真理の言葉も届かない。真理の狼狽に付け込んだ黒崎は、掃除婦を人質にとり、ダイナマイトを奪い取る。形勢は逆転。戻って来た子分達に真理は店の地下室へ連れ込まれる。そこは組のリンチに使用される場所だった!「バシッ!」手錠で両手を縛られるた真理に子分のひとりが放ったムチが唸る!真理危うし!(次回へ続く)


次回予告:「天地政五郎を殺した黒幕・黒崎組の組長への真理の復讐は、
最悪の事態へと展開していく。 そして全ての罪を自ら背負った
真理が取った行動とは?
」お楽しみに!

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