赤き血のイレブン

「英雄、スーパーマンの活躍するスポーツも、それなりにおもしろい。しかし、どこにもありふれた若者たちが、血と汗と涙で目標を達成していく姿も、ぜひ描かねばならない。この作品は、そういう平凡児たちの歌である。耳を傾けてやってくれたまえ。」(少年画報社刊/ヒットコミックス各巻カバーに収録)


朝日の恋人

「いわゆるスポーツ根性路線を、「巨人の星」や「柔道一直線」などで開拓した私は、この「朝日の恋人」で、劇画界に純愛路線の新風を送りこんだと自負する。同時に、私は本質的に青春物の作家だと思うので、それを色濃くうち出した点でも愛着の深い作品である」(秋田書店刊/少年チャンピオンコミックス各巻カバーに収録)


おとこ道

「「けものみち」ということばがある。けわしい山中に、あるいはジャングルに、人間がこしらえた道ではない、けものたちが踏みかためて、おのずとできた道の意味である。私は諸作品の中で一貫して、さまざまな男の生き方を描いてきたが、男の生きる道とは、つまりは、この「けものみち」ではないかと、近ごろ思えてならない。長い年月、そこを歩いていった、けものたちの孤独な姿が目にうかぶごとき、けものみち…。人間のこしらえた機械文明だの、八方まるくおさめるための約束事だのに、敢然と反逆したひとりの男の生き方をはやりの仁侠の世界に舞台をとり、しかし、こしらえごとでない血のにおい、血のしぶきで描きぬこうと意図したとき-『おとこ道』なる題名が、おのずと、できあがった。」(週刊少年サンデー 1970.34号 新連載予告頁より)

まえがき
「「おとこ道」は「巨人の星」や「あしたのジョー」ほどにはマスコミ的には有名にならなかったが、もっとも梶原一騎らしい作品の一つである」そんな風に評してくれる編集者や友人知己が、かなり多い。私自身、この説に同感である。男の生きる道という劇画作家としての私にとって唯一無二のテーマを、なるべくオーバー・アクションを排し、地道に追究してみたつもりだ。コンビの矢口高雄君の禁欲的なタッチも、このこころみによくマッチしてくれた。これは「少年サンデー」誌に1年間にわたって連載した作品だが、おりしも大学生やサラリーマンの劇画読者が激増しはじめていた頃で、そうした年代層には好評だったのを覚えている。」
(サンケイ新聞出版局刊/サンケイコミックスに収録)

「この作品は、さまざまな男の生き方のうち、人間のこしらえた機械文明や、八方まるくおさめるための約束ごとなどに、敢然と叛逆したひとりの男の生き方を、任侠の世界に舞台をとり、しかもこしらえごとではない血のにおい、血のしぶきで描くことを意図した作品である」(秋田出版サンデーコミックス1巻に収録)2020.11.29更新



ケンカの聖書
「私のプロレス物には、梶原一騎のほうの筆名を用いた「タイガーマスク」があるが、これは低年齢層の読者を対象としていたので、野球で「巨人の星」を、ボクシングで「あしたのジョー」を描いたように本格的なプロレスの世界をえぐりたかった。コンビを組んだ石井いさみ君はいわゆるフィーリング調の画家であったので、くそリアルな迫力にはやや欠けたうらみがないでもないが、それはそれで一種の妖しく美しいムードが出た。いうなれば予期せぬ異色作となったが、そういう意味で私の好きな作品である。 」(若木書房刊/コミックメイト各巻カバーに収録)

柔道讃歌
本誌:新しい試みがあるとお聞きしましたが…。
梶原:ええ。少年まんがになかった母親像を完成させたいと考えています。
貝塚:屈強な漁師にまじって地引き網を引くような力強さの反面、そぼくなやさしさで主人公をつつんでゆく、そんな母親がいいですね。
梶原:少年の心のふるさとはいつでも母親ですからね。

(週刊少年サンデー 1972.20号 新連載記念対談より一部抜粋)

「力のない少年が、怪力の大男をブン投げる、「柔よく剛を制す」の夢にとりつかれた若い魂たちをぞんぶんに描きたい。かれらが、まことの柔道を追求しながら、いかにして日本柔道界をぬりかえていくか。どのように笑い、泣き、血の汗を流すか!?歯ごたえのある熱血ドラマにしたい。」

(週刊少年サンデー 1972.21号 連載第1話柱頁より )

わが三大代表作品 梶原一騎
「この「柔道讃歌」で私は、過去「巨人の星」で野球を、「あしたのジョー」でボクシングの世界を描きぬいたように、柔道の本質に肉迫したい意欲に燃えている。 画家も前記二作品の川崎のぼる、ちばてつや両氏とならぶ巨匠、貝塚ひろし氏であることだし、さいわい早くも、本編が二作品につづく’72年度の代表作品と、編集者、読者間で目されつつも、むべなるかなであろう。 ご愛読、ご支援を切に乞う。

(若木書房刊/コミックメイト第1巻まえがきより )

新・ボディガード牙 /カラテ地獄変
「牙」再登場に寄せて 梶原一騎
「あえて言揚げさせて貰うなら、昨今の過熱ぎみでさえある空手ブームに火を点けたのは、この「ボディガード牙」と少年週刊誌連載中の「空手バカ一代」である。二編の空手モノの人気に勇気づけられ、日本では当らぬとのジンクスあった香港製カラテ映画、かの「燃えよドラゴン」の輸入を決断したとー。私と「空手バカ一代」のモデル大山倍達は試写会に招かれた折り、配給会社側から直接に聞かされた。不快な話ではない。されど事情あって「牙」は一休みしたものの、私と畏友であり空手の師でもある大山倍達は話し合った。ブームは結構だが、ご多分にもれぬ便乗のキワモノ、インチキ空手モノの横行は目にあまる。一つ「牙」を復活させ、これぞ真実の空手なりのスジを通そうーと。たしかに空手道の一面は超人的だが、それと荒唐無稽とは次元が異り珍カラテがはびこるゆえに。なにしろ、しかし世界の空手王マス・オーヤマがカラテ・シーンに限って監修してくれるゆえ、お楽しみに。」
(週刊サンケイ 1974.7/25号 新連載予告頁より

インタビュアー:どういうことを書きたくてやってらっしゃるのか、というようなことをお聞きしたいんですが。
梶原一騎:「あれはもう場所が“週刊サンケイ”だから、満員電車にゆられているサラリーマンが視覚的に楽しめればいいわけですよ。そういう作品もあるわけ。」

(まんが専門誌 ぱふ1980年1.2合併号「梶原一騎小特集」より一部抜粋)

若い貴族たち
傷だらけの誇り 梶原一騎
「若い貴族たち と、いっても何も小生は、いわゆる大時代な貴族社会を描く気などあろうはずもない。 現代日本の貴族たちを描きたい!! が、これまた断じてハイソサエティとやらに属する連中の気どったドラマなどにあらず、そんなものを描くぐらいなら小生は昼寝しておる。 ここで、あえて描きたい貴族はとは 「みにくい日本人」とやらで、日本人自身が自己嫌悪を起こしている戦後のダメな日本人から脱皮し、泥にまみれて傷だらけとなりつつも真の誇り高さを復権せんとする、つまり世襲や親の七光りなどとはカンケイなく、みずからの血みどろの手で貴族のプライドをつかまんとする若き群像だ。 彼や彼女はジーパン姿で、あるいは野良犬のように泥棒猫のように最初は登場するやもしれぬが 世界に冠たるイギリス貴族とて、もとをただせば海賊の末裔なのだ。魂の貴族たちの支援を乞う!!」(週刊漫画ゴラク 1974.9/26号 連載予告頁より )

※映画『若い貴族たち・13階段のマキ』公開に際して語り
「作家というのは、精神の切り売り作業をしているようなものなんだな。だから、精神の産物としての作品が映画化されるのは、嬉しいけれども反面、こわさもある。作品のイメージがこわされやしないかという不安だな。 私の作品は『巨人の星』にしろ『愛と誠』にしろ、むろん『若い貴族たち』にしろ発想は同じなんだ。それぞれの主人公を通して青春の理想像を追求しているという意味においてね。 それが映画化される場合、俳優さんによってかなりイメージが固定してしまう。だからこれまで映画化にあたって主役を演じてもらう俳優さんは最少限度のところで妥協してきたつもりだ。妥協というのは、自分の理想像そのままの人間なんてまずいないといっていいからだ。しかし、志穂美クンの場合に限って妥協という言葉を忘れたね」 (週刊漫画ゴラク 掲載記事「絶賛の嵐を呼ぶ『若い貴族たち』ついにスクリーンに登場!! 日向真樹は実在した!?」より)

青春の叙事詩 梶原一騎
「この作品は、私が『愛と誠』に次いで、いわゆるスポ根ものから、新境地を目差した青春の熱血と慟哭の叙事詩である。プラス空手アクションの魅力も、空手四段である作者の持てるすべてをたたき込んだ。楽しんでもらえると自負する。」 (ゴラクコミックス 「若い貴族たち」1巻帯より)
=2019.9.2 NEW!=

斬殺者

『斬殺者』について 梶原一騎
「過去、私は劇画原作の分野において、『巨人の星』にせよ『あしたのジョー』にせよ、人間を肯定的に描いてきた。その意味で、本編の主人公である無門鬼千代は、わが作風の異端児とも云える。 そして、この作品は、漫画ゴラク編集部の熱意に人生意気に感じて応じた。私として最初のいわゆる青年劇画でもある。 さりとて、しかし、対象が高年令層の読者だからと、格別に深刻ぶったのでも奇を衒ったのでも絶対ない。 私の作品群を世間はスポーツ根性物とやら、一括りに称してくれる。それはそれでよい。が、こと剣の世界には根性も、七転び八起きも通用せぬ。 早い話、斬られてしまったら、それで一巻の終わりなのだ。異論もあろうが、私は従来の小説、TVドラマ等に登場する優等生的な剣豪に致命的なウソを見る。 あれでは性格的には善良かも知れぬが、断じて人は斬れぬ。スポーツ剣士であって“斬殺者”ではない。そこを描きぬいてしまえば、低年齢読者もいる従来の舞台では、さまざまな障害もあり、刺激が強すぎようが、ウソは描けぬ 私に剣豪物のない所以。 ともあれ、だが、私は始めた。小島剛夕という、この上は望みようもないパートナーも得た。刻苦精進あるのみ。 武蔵も鬼千代も闇の世界に棲むが、無明の一点の光明を、美を求めて描いていく。」(漫画ゴラクコミックスより )


侍ジャイアンツ

「番場蛮は、バイタリティーそのものといった主人公です。野性味あふれる行動的性格で、サムライという言葉にふくまれている、強いもの、大きなものに反発する反逆児です。野球をとおして、八方やぶれの若者のダイナミックな行動と、不撓不屈の根性を描いたつもりです。本巻では番場の型やぶりのサムライぶりを、巨人軍入団まで描きました。」

巨人軍の腹に宿る反骨魂!! 梶原一騎
「私は『巨人の星』で野球マンガというものを全部書きつくしたとこれまで思っていたが、まだまだ書きつくされていなかったようだ。巨人マンガでは長島や王が大活躍するのは当然だが、星飛雄馬にしても、花形にしても、どちらかというとマジメ人間であった。そこで、巨人軍の世界をあらゆるアングルから考察してみると、これまでまったく書いていなかった野性的、かつ、ダイナミックな自然児といおうか反逆児といおうか、そういった男が、王者巨人の中でどういうふうに戦うか、といった未知の開拓地があるということがひしひしと感じられた。このマンガの主人公、番場蛮によって、『巨人の星』にまさるともおとらない、マンガを書こうと思う。いや、書けると思う。いま、マンガ界をみてみると、マンガそれ自体が、一つの理性を失い、理屈を失った、いわゆるフィーリングで読者にせまるという傾向が横行しているようだ。登場してくる主人公にしても、なにかひなびた人物が多い。そういうマンガ界の現状に挑戦、エネルギッシュな作品をここらでよみがえらせてみようと思う。私とコンビをくんで、番場蛮を全魂かたむけて描いている井上コオ氏は、新人ながらも個性的な男で、このマンガを描くのに、もっともふさわしい人間だ。」
(集英社刊/ジャンプコミックス第1巻カバー&巻末解説より)


ボディーガード牙

本格アクションを 梶原一騎
「かねがね笑止に思ってきたが「007」の亜流であり、しかもあの気の利いたエスプリはゼロ、非情一点張りの主人公が、いわゆる青年劇画誌から成人週刊誌にまで横行している。いかにもニキビ臭い運動不足のマンガ家の青臭いアコガレの産物だ。本格の男のアクションを、いわば、「暴力の美学」まで昇華させて描いてみたい。扱うのはケンカのプロ「用心棒」の世界だ。たまたま私の空手の師であり、また義兄弟の契りをむすぶ空手八段の「ウシ殺し」大山倍達が戦後の一時期マッカーサー元帥のボディガードをやっていて、その体験談を聞くうちに得た構想である。オトナを楽しませたい。」 (週刊サンケイ 1972.10/13号 新連載予告頁より)

まえがき 梶原一騎
「劇画界に三バカあり、と日頃から私は思っている。 ニヒルぶるバカ、クールぶるバカ、芸術ぶるバカ この三バカだ。 こうしたオトナぶったようで実はガキっぽい劇画家ないしは彼等の描きだす主人公に対抗し、あえて血も涙もありすぎるほどあるヒーローの造型をこころみたのが「ボディガード牙」である。新聞社系の「週刊サンケイ」の読者は真の意味でオトナなので、作者の意図がスムーズに歓迎されたらしいのは本懐だったし、東映で映画化され、TV化の企画もあり、さいわい好評裡にすすんでいる。 コンビの中城健君も器用に劇画ブームの波には乗れぬ気性だが、知る人ぞ知る実力派だったのが、この作品でケンランと才能を開化させてくれた」
(サンケイ新聞出版局刊/サンケイコミックスより)


巨人のサムライ炎
この新作が、万一「巨人の星」より見劣りする作品になりそうなら、私は筆を執らぬ 作者の言葉 梶原一騎
「最近のプロ球界には、いわゆるサムライが姿を消したと言われる。とりわけ巨人のチームカラーは球界の紳士とされる。前作「巨人の星」の星飛雄馬も多分に優等生的であった。今回は一変して、とてつもない奔放なサムライ主人公を紳士・巨人にブチこんでみたい。いま私の頭の中では吾ながら吹き出すほどの大波乱、珍騒動がウズまいている。多情多感のサムライ彼に、ご声援を。」(週刊読売 1979.5/13号 新連載予告頁より)

真説柳生十兵衛
柳生十兵衛の実像 梶原一騎
「柳生十兵衛は、講談的な面白さに脚色されている。けれども、今回の『真説・柳生十兵衛』は、現代に残された資料を最大に読破して書いた。 したがって、今まで発表された映画、テレビ、小説などの柳生十兵衛よりも、もっとも柳生十兵衛の実像に近いものになったと自負している。『斬殺者』でコンビを組んだ小島剛夕氏が絵を担当するというので、100ページという大作にもかかわらず、取り組んだ次第である。」
(カスタムコミック5月創刊号 創刊に寄せて より)
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