あしたのジョー

さらばジョーよ 高森朝雄
「かなり長期間にわたって連載をつづけても、ついに作者にとって架空の人物のままで終わってしまう主人公もある。連載を終了して、だからホッとビジネス・ライクな解放感を味わう。ジョーの場合は違う。たんに私の最長作品だっただけではない。血が通っていた。私にはジョーの息づかいが聞こえた。ひしひしと彼の実存を感じながら仕事してきた。ある時期から、もうストーリー面で小細工をろうする必要はなかった。ジョーが勝手に動きまわり、躍動し、それをあとからたどっていけば、いつしかストーリー、否、たしかな一つの人生が脈うっていた。そして、そこに「あしたのジョー」の成功の主因があったと思う。不自然に劇的効果をねらってねじまげずとも、きわめてナチュラルな起伏が、おのずと生じた。と、手放しで自画自賛できるのも、ちばてつや氏との真の意味で共同作品だからだ。彼なかりせば、この作品の成功もなかった。梶原一騎のほうの筆名でやらなかった、やれなかった仕事を氏と共にやれた。解放感はない。身辺から友人がさったような哀感をこめて  さらば、ジョーよ!」
(講談社刊/週刊少年マガジン1973.22号 完結記念大特集「サヨナラ!!あしたのジョー」より)

なぜ、近ごろはスポーツまんがというと、すぐ「根性もの」なんてきめられてしまうのだろう。「あしたのジョー」はけっして根性ものなんかではないのだ。ある野生の魂の物語である。現代人が失いつつある原始の血を、夕映えのようにまっ赤に燃やし、やみくもに挑戦しつづけるジョーの姿を、いっそう強烈に第二部でえがきたいと思っている。
週刊少年マガジン1970.12号掲載 TVアニメ化と第二部の再開による特別記事より

まず主人公・矢吹丈のキャラクターづくりだが、これは模範少年のカガミ星飛雄馬の『巨人の星』と同じ誌上でもあり、正反対のトコトンメ不良少年モに仕立ててやろうときめた。少年向け作品空前のアウトローぶりを発揮させる言い訳めいた発想から、今日はこうでも明日は違うぞ、と『あしたのジョー』なる題名をひねりだした。同じ名前が目次に二本並ぶとの理由だけでなく、これも『巨人の星』スポコン路線との先入観を読者に与えぬ配慮もあって筆名も“高森朝雄”とした。
(毎日新聞社刊「劇画一代」掲載)

2時間半とは…うれしい。映画は迫力がある。 高森朝雄
「あしたのジョー」が連載されていた当時、少年マガジンは週刊誌界初の100万部突破という偉業を成し遂げ、又サラリーマン、学生が漫画を読み始めたはしりであるとも言える。それくらいにこの作品が色々な方面の人間に与えた印象が強かったのだろう。当時この「あした」というタイトルは非常に斬新で、無限の可能性が含まれたこの言葉にもこの作品を浮かび上がらせる要素があったと思う。今だに「あしたのジョー」が広く多勢の人達から受け入れられているのは、やはり現代の若者の燃焼しきれない部分をジョーが代わりに完全燃焼させているから、それが彼に対する憧れとなるのであろう。力石との生命を削り合う友情関係も、同様である。今度2時間半の映画となって公開されるが、劇画史上に残るあのジョーのイメージが10年経った今でも新鮮な感覚を伴って観客を魅了出来ればと願う。(談)
(1980年公開 劇場版『あしたのジョー』パンフレット収録 )

「雑誌やテレビでジョーが終わって7〜8年たつのに、きのう終わったみたいにみなさんにも感慨をもって迎えられているんですが、ぼくのなかには伝説のヒーローとしてジョーは生きているんです。こんど映画でもみてもらいますがテレビのパート2はやる気はありませんね。おそらく、10年たっても20年たってもジョーは古くは感じないと思いますよ。いつの時代にも、新しいドラマとして迎えられるのではないかと思います。それというのは、ジョーのもっているボクシングなり、人生に対するマジメさ、生き方に、つくられた要素がない、ということでしょう。当時「巨人の星」や「タイガー・マスク」などという人気まんがをもっていましたが、あれとおなじくらいヒットさせようという考えはぼくの中にはなかった。あててやろう、という気がなかったことが、逆に受けたんだろうと思いますよ。かざりっ気や作為があると、そのときはヒットしても長つづきはしないものなんです。ジョーは、ボクシングに素材を借りただけのことで、本当は青春まんがなんですよ。人間って、どんな高価なものや流行のファッションを身につけていても、その本質は変わらないはずです。それが人間の純粋さだろうし、マジメさだろうと思いますね。「あしたのジョー」はそうした、人間のありのままを描いたつもりなんです。そこらがみなさんに感銘を与えている要素だと思いますよ。だから、ジョーは永遠に生きていくのかもしれません。ジョーは、すでに作者の手をはなれてファンのみなさんのジョーになってしまったみたいですが、天衣無縫なジョーをそれぞれにとらえて、だいじにしてくれたらいいな、と思います。
(1980年発行 徳間書店刊ロマンアルバム13「あしたのジョー」収録)

「私は多くのスポーツ、格闘技の世界をテーマにした作品をえがきつづけてきたが、とりわけ好きなのは「あしたのジョー」で」ある。ちばてつや氏のすばらしい作画、構成とあいまって、自分で読み返しても楽しい。だから、一生懸命に劇場映画にもした。ジョーよ、願わくば、いつまでも世の若い人達に愛されてくれ」
(1980年発行 講談社刊 KODANSHA ANIME COMICS「あしたのジョー」1巻収録)


タイガーマスク
「視聴率40%をとった原因はいろいろあるが、あのころ、私がいつも力道(山)と一緒にいた関係上、プロレス界を知りつくしていたことだ。たとえば、メキシコで覆面レスラーを見ていたので、それがつかえた。当時は覆面がめずらしかったらしく、「タイガー」を見たプロレス協会でも、覆面レスラーを呼びはじめたくらいだった。作品のなかでは「ちびっこハウス」の話が忘れられないな。毎年クリスマスになると、力道と私がサンタになって、板橋の整肢療護園へ慰問に行ったものだ。そのときの子どもの喜びようは、いまでも鮮明におぼえているよ。そんなことがもとになっている。あの作品は、原作者とテレビの意見のズレがまったくなかった。それも、渡辺亮徳(東映)さんが、毎日のように私のところへ打ちあわせにきてくれたし、また、スタッフ一同、熱心にやってくれたことによると思う。」
(徳間書店刊/ロマンアルバム5別冊テレビランド増刊号「タイガーマスク」より)

ジャイアント台風
「「ジャイアント台風」は『少年キング』連載のはじまりから、読者の強い反響をよんだ作品です。主人公のジャイアント馬場選手は実在の人物だけに、その真実の姿を伝えるため、いろいろ調査や研究に苦労させられます。しかし、実在の人物を題材にしたまんがとしては、これまで例をみないほど豊富な資料とエピソードをもりこんだ、すぐれた作品にしていこうと努めています。」
(少年画報社刊/ヒットコミックスより)
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