「認めたら…おれが初恋のトリコになったら… 死んだ兄貴がうかばれねぇぜ!」

FILE#127「初恋物語」(画:小野 新二)



週刊少年マガジン連載/1980年3/4号〜1981年34号迄

●あらすじ:
高杉友也の初恋は、憎しみという名に姿を変えて訪れた。その相手・栗原珠恵は、過失とはいえ実の兄を事故死させたのだ。好意を寄せていても素直になれない友也だが、郷里出身のオリンピックランナー由利洋介の帰郷による校内マラソン大会がキッカケとなり珠恵に対して心を開いてゆく。由利にその才能を認められ東京の高校へ進学する珠恵を追って同じ高校を受験するが不合格。結局定時制高校へ通いながらマラソン部を作り、友也自身も大会で好成績を収めるまでに成長する。これによりマラソンの名門校への推薦入学を果たし、また帰郷先の浜辺での珠恵との口づけが友也を幸せの絶頂に導いた。しかしあるパーティーの席で酒に酔った勢いで珠恵との口づけの一件をしゃべった事で事態は一転。今や有名人の珠恵がスキャンダルに巻き込んでしまった責任を取り、学校を辞め、マラソンも捨ててN.Yに旅立つ。友也の自暴自棄な暮らしを暮らし聞いた珠恵は、N.Yで行われる大会を最後に引退して友也を立ち直らせようと決意する。大会当日、友也を愛する女、カルメンが嫉妬のあまり珠恵を殺そうとライフルで撃った弾は、事を知りゴール寸前の珠恵を庇う友也の体を貫いた!ある初恋物語が幕を閉じた。

●BONはこう読む!:
恋した男のネガティブな心理描写に共感し、 連載当時(BON14才!)よりハマって読んでしまった。主人公にとってマラソンはあくまでも好きな女性とのつながりの手段でしかなく、そこには「努力」も「根性」もなく只彼女からの愛を得たいがための(世紀末の現在から見ればとても滑稽ではあるが)苦闘の青春の物語として魅力ある一作。ただし後半原作者の身辺状況の悪化が作品の質の低下を招き、あっけなく終了してしまう。もっと可能性を秘めた作品だっただけに残念だ。


●単行本:
講談社刊/KCコミックス全8巻

●その他:

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