「また文芸的になるけど… 真のボクサーにとって 愛する女性と すぐれた敵は ひたむきに全身全霊を打ち込む意味で 原点は同じかもしれない」

FILE#130「雨の朝サブは」(画:下條よしあき)



プレイコミック連載(隔週刊)/1979.9/13号〜1981.12/24号

●あらすじ:
目覚めればいつも雨の朝。人生に何の目的も見出せない雨の青春を送る若者・支波三郎、通称サブ。彼はボクサーだった父を失明された代償として足を洗ったはずの男・赤尾が、息子の研二をボクサーとしてデビューさせた事を知り怒りに燃える。報復に訪れた試合場で研二にKOされた事をキッカケにボクシングを始めるサブ。研二の妹・火鳥の幾度に渡る妨害にも屈せず連勝街道を突き進む。そうしたやり取りの内に2人の間には、ほのかな恋愛感情が芽生えていく。様々な曲折を経て、ついに実現された宿命の対決。得意のカウンターを封じられ窮地のサブだが、起死回生のトリプルクロスカウンターで両者KOの引き分けに終わる。これを最後に研二は引退。次の目標であるJフェザーの王座を手中に収めたその夜、サブは火鳥とついに結ばれる。しかし、ささいなトラブルからサブを庇った火鳥は命を落としてしまう。自暴自棄になり失意のサブだが「無冠の帝王」と呼ばれる強敵・マリオンの出現に復帰を決意する。再起第1戦で対決したマリオンを見事KOした事がキッカケで、世界中のプロモーターから注目されたサブは、持ちかけられた海外遠征の話を承諾する。ハワイはホノルルを訪れたサブ。第1戦の相手チーフ・ホワイトウルフは、たったパンチ2発でプロレスラーをKOするヤツだ。夜の海岸を走るサブの胸中には、無気味な対戦相手への不安が渦巻くのであった 。

●BONはこう読む!:
時あたかも「あしたのジョ−」のリバイバルブームに湧く頃に連載が始まった本作。梶原氏は「ジョ−」との差別化を図る上で、登場するボクサー達を現代風に設定している。ライバルの妹への思慕を認識し、彼女をモノにする事を糧とするサブや事業進出への影響を考え、あっさり王座を手放す研二。それが本作のオリジナリティであり魅力であるのだが、「ボクシング作品」として捉えた時に何処か、もの足りなさを感じてしまうのも事実。むしろ当時漫画界の主流を占めてきた「恋愛・青春物」として読めば面白いとは思う。

●単行本:
秋田書店刊/秋田書店漫画文庫全5巻(未完)

●その他:
※単行本収録は1981.5.14号迄
※〜1980.9/25号迄が第1部。翌々週10/9号より第2部が開始。

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