「近くばかりこせこせ見るから 近眼になるんだ! おれは星をみる!!雲をみる!!海をみる!!つまり でっかい夢をみる… それが大番雷太だ よろしく!!」

FILE#32「ファイティング番長」(画:水島 新司)



少年キング連載/1967年38号〜1968年40号

●あらすじ:
人間を成長させるのはなまじの友よりむしろすぐれた敵。戦前のオリンピック選手である父の信念のもと、有名進学校「ニュートン学園」に転入した大番雷太。下町育ちの雷太の行動は、温室育ちでガリ勉一本やりの生徒達を苛立たせた。スポーツを通じて、健全な精神は健全な肉体に宿ることを伝えようと生徒に呼び掛ける雷太。だか生徒達の反応は冷ややかだった。だがPTA会長の息子の闇討ち犯人として疑われた事件を機に、徐々に雷太に共鳴する仲間が増えていった。そこでスポーツ百般なんでもこなす「オリンピック部」を設立し、まずは野球から始めることにする。因縁ある天道中学との練習試合が決まり意気上がる雷太達。しかし学園側は部活動を認めないばかりかグラウンドを使わせてくれない。落ち込む雷太達のために、自分のオンボロスポーツ塾を開放し練習させる父。猛特訓の日々は続きスポーツ音痴の生徒らも徐々に成果を上げ始めた。一方、天道中野球部の主将・火京はデッドボールやスライディングタックル等による喧嘩野球作戦で迎え撃とうと牙を研ぐ。そして試合当日、メンバーの1人が試合場に現れない!8人では野球出来ない。雷太ピンチ!どうなるニュートン学園野球部!?
(サンケイ新聞出版局刊/サンケイコミックス収録分迄 ※1968.3号途中迄)

●あらすじ-2(野球編):
●ケンカ野球を企む天郷中にはメンバー不足は気にならず、試合は8人で行われることに。そこに遅れて現れた白井が雷太に耳打ちした遅刻の理由とは、明智らニュートン学園の生徒が通う英語塾に無線ラジオを仕掛ていたのだ。天郷中の卑劣な野球に耐え忍ぶ姿が、雷太の父の懸命な実況放送となり塾内のスピーカーからが流れる。いつしか母校愛に目覚めた生徒たちは、塾を飛び出しグラウンドへ向かった!熱い声援を受け、燃えた雷太はピッチャーのビーンボール作戦を撃破。試合は人数が足りなくなった天郷中の放棄試合で見事初勝利を飾った。●だが、勝利の代償は高かった。この件に怒った学習塾の講師
や父兄達の抗議を受け、学校側は彼らに野球をさせない為、塾側と手を組んでの学科試験の実施を画策。南星中との試合の為、塾を休んだ彼らには翌日の試験範囲は分かず途方に暮れてしまう。大人達の利己主義に怒った白井は、その晩試験問題を盗み写し部のメンバーに配る。だが、不正に手を染めず正々堂々とあろうとする為に、答えは書かず提出した雷太の行動と言葉に打たれたメンバー達もこれに賛同。彼らの結束はさらに固まるのであった。

(週刊少年キング 1968.3号途中〜13号迄)

●あらすじ-3(ボクシング編):
●オリンピック部から新たにボクシング班を作った雷太に、因縁深い天郷中から挑戦状がきた!殺人パンチを持つ強敵・赤木竜を打倒するため、父が発案した猛特訓が大番館で繰り広げられる。一方、赤木に味方する謎の男の策略により、試合は双方7名の勝ち抜き戦で行われることになる。嫌がる生徒達を説得し頭数を揃えたボクシング部は天郷中へ乗り込んだ。●1番手で出場した雷太が最初の相手をKOすると、次に現れたのは何と赤木だった!自分が負ければ他の素人メンバーが痛めつけられてしまう。雷太の必死な闘いの末、試合は両者ダブルKO・2試合後再試合という結果に。友の為にと勇気を奮い戦う白
井、その姿に打たれた田沼。2人の健闘ぶりに奮い立つ雷太と赤木の再試合のゴングが鳴った!●技術では劣るものの、それを上回る強い精神力で見事赤木を倒した雷太は、その後も勝ち抜きを重ねて勝利を勝ち取った。●彼らの敢闘精神に打たれた謎の男は、自らの過去と黒幕の正体を語る。真相を知った雷太は黒幕・英語塾のジェームスの所へ乗り込んだ!が、師の身代わりに罰を受けようとする明智の姿に、雷太は怒りを堪えて全て水に流す事に決めた。

(週刊少年キング 1968.14号〜24号迄)

●あらすじ-4(フェンシング編):
●雷太のクラスに転校生・南十字光がやってきた。映画俳優の父を持ち明智に劣らぬ秀才で運動にも優れた彼の存在に、仲間を得たとばかりに喜ぶ雷太。新たに剣道部を作り、光をオリンピック部に誘おうとしたが、彼はフェンシング部結成を宣言した!泥臭さを嫌い要領良く技術を学ぶ主義のフェンシング部と、剣道部は学園内で対立。部員集めに苦労する雷太にライバル・明智が協力を申し出る。互いの主義を賭けて、フェンシングと剣道の変則対抗試合が決まると、夏休みを利用して雷太・白井・ハルミ・明智の4人は山中で特訓に励んだ。光のやり方に一度は心迷った雷太だが、天狗に扮した父の叱咤激励に再び意欲を取り戻した。●始業式後、フェンシング部と剣道部の対抗試合が始まった。1勝1敗1引き分け、勝敗を分ける最後の1戦で対決する雷太と光。力量の差に無様な姿を見せながらも、勝負を捨てない雷太の根性が奇跡を呼び逆転勝利を掴んだ。雑草の根性を見直した光は素直に敗北を認める。●試合後、明智は雷太に勉強という新たな難関に挑む事を告げる。ガリ勉だけでなく、スポーツだけでなく、互いの長所を競い学び合う。そこに理想の青春の姿があると知った時、雷太は父がこの学園に入学させた真意を知る。我が子の成長を見届けた雷太の父は、更なる成長を祈りひとりエールを送る。「はばたけ わが愛する むすこよ!!」と。-完-
(週刊少年キング 1968.25号〜40号迄)


●BONはこう読む!:
さて本作の特徴は何と言っても水島新司とのコンビ(梶原氏も単行本の解説に「二度と実現せぬコンビ!」と語っている)であろう。テーマを簡単に言えばガリ勉人間じゃダメ、若者よスポーツをしよう!といった所か。だけど秀才のライバル・明智勉が自分の実力の範囲で懸垂をやり遂げても、雷太は決して勉強でその逆を示す事はしない。それが自分には気になり、「ただのスポーツ押し売り少年」にしか見えない主人公に魅力を感じられない原因となった。惜しい。

●単行本:
サンケイ出版社刊/サンケイコミックス全1巻《旋風編》(未完)

●その他:
※単行本化にあたって「泣き笑い番長」に改題。

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